鉄婚旅行(1)~丹沢編~
結婚6年目の結婚記念日は鉄婚式というらしい。結婚記念日がGW中にあるため、震災の年を除いて毎年旅行に出かけている。6年目の鉄婚旅行は丹沢登山と久しぶりの美里祭りに行くことにした。
5月1日
5月1日は丹沢登山の玄関口の一つである秦野市までの移動。12時30分頃の「はやぶさ」に乗るつもりでいたら、スマホのアプリが郡山駅での人身事故の影響で乗る予定だった新幹線が急遽運休になったことを知らせてきた。まだ時間には余裕があったので、車両の変更をしてもらおうと最寄り駅のみどりの窓口まで行った。
みどりの窓口では、「はやぶさ」に接続する「こまち」は運休になったが「はやぶさ」は予定通りだと言うので、とりあえず一度自宅に戻った。
しばらくして、当初の予定より早めに自宅を出発し改めて駅へ行った。念のためもう一度窓口で確認すると、今度は「はやぶさ」も運休になっていた。JR東日本製のアプリがJR東日本発の運行情報を伝えてきているのに、現場の窓口に情報が届くのが遅延するとはどういうことだろう? と思いながら、1時間後の「はやぶさ」に変更してもらうことにした。結局、「はやぶさ」には二人掛けの席が空いてなかったので、同じ時間の「こまち」に変更した。
席は確保したものの、事故の影響で東北新幹線全体のダイヤが乱れていて変更した「こまち」も時間通りに出発するかどうか分からないが、とりあえず仙台駅まで行って昼食を食べて様子を見ることにした。
昼食を食べた後で、改札口で訊ねたら、乗る予定の「こまち」は現状で6分ほど遅れているとのことだったが、大幅な遅れではなかったのでホッとした。
結局、目的地である秦野市のホテルには、当初予定よりも一時間ちょっと遅れた程度で到着した。
5月2日
ホテルは小田急電鉄秦野駅のすぐそばだった。秦野駅前からは丹沢登山の別の登山口であるヤビツ峠行きのバスが出ていて、バス停には登山客が列をなしていた。私達が登る予定の大倉口行きのバスは隣の渋沢駅前から出るので小田急電鉄で一駅だけ移動してバスに乗った。
登山一日目のルートは、大倉登山口を出発し、塔の岳を経て丹沢山に至るルートで約10km(Ambit測定)、約6時間45分の行程だった。
8時半ごろにビジターセンター前を出発し、大倉尾根を登り始めた。
大倉から塔の岳へ登る大倉尾根はひたすら登りが続くため「バカ尾根」とも呼ばれている。ここだけで標高差が約1200mある。登山道は丸太で組んだ階段状によく整備されていたが、これが意外と疲れるんだよね。植生のせいであまり周囲の眺望はそれほど良くない。たまに開けた所でも曇りがちの天気で、朝にホテルから見えた富士山も全く見えない。気付いた花もキクザキイチゲとスミレぐらいで、ひたすら我慢の登りが続いた。
当初は塔の岳で昼食の予定りだったが、延々と続く登りで妻が少々ばて気味でペースも落ちてきたので、花立山荘前で昼食を食べた。30分ほど休憩して再び出発し、塔の岳山頂に着いたのは13時頃だった。
塔の岳山頂は多くの登山客で賑わっていたが、相変わらずの曇り空で期待していた眺望は得られない。
山頂の尊仏山荘で記念バッジを買い、20分ほど休んで出発した。
植生は少ないが眺望は良くない。
竜ヶ馬場あたりから塔の岳を望む。四角いのが尊仏山荘だ。
15時12分にようやく丹沢山山頂に到着した。
宿泊するみやま山荘。
この日のみやま山荘の宿泊客は約60名でほぼ満員。畳1畳分程度の布団一枚に二人で寝ることになった。食事も3回に分けて食堂で食べることになっており、私達は17時40分からの2回目の食事に割り当てられた。
食事まで時間があったので、外に出たり山小屋内でくつろいでいたりするうちに、「2回目の食事の方、どうぞ!」と声がかかった。
この日のメニューは鴨のロースト、サラダ、タケノコとわかめの煮つけ、とろろ、黄桃など。山小屋だからもっと質素な食事かと思っていたが、意外とボリュームがあった。疲れたからだに味噌汁の塩分が滲み渡った。
食事が終わると、20時半の消灯まで何もすることがなくなった。ふと窓の外を見ると少し雲が切れてきたようだ。淡い期待を抱きながらカメラを持って外に出た。
西の方に目を向けると暮れなずむ空にぼんやりと浮かぶシルエットがあった。山頂付近しか見えないためにほんとに富士山か疑問を抱く声も聞こえてきたが、その場にいた数人の多数決で本日の富士山に決定した。一日の最後に富士山の姿を眺められて、疲れも癒えた気がした。
5月3日
ご来光が拝めるかと思い4時過ぎに起きて外に出た。東の空は明るくなりつつあったが、木立に遮られて太陽は見えそうもない。西の空に目を向けるとまだ明けきらぬ蒼い空に白い頂きが浮かんでいた。
しばらくして太陽が昇ると、日差しを浴びてやや赤味がかった富士山の姿がくっきりと見ることができた。
山小屋に戻って身支度を整えていると、5時20分過ぎに「2回目の朝食の方!」と声がかかった。朝食のメニューは炊き込みご飯とみそ汁、オクラ、切干大根(だったっけ?)、梅干しなど。
食事の後に身支度を済ませ、6時半前にみやま山荘を出発した。
5月3日のルートは、当初はいわゆる丹沢主脈と呼ばれる蛭ヶ岳、焼山を経て焼山登山口へ下山する予定だったが、余裕を持って歩いて下山しても、焼山登山口発のバスの時間までだいぶ暇を持て余しそうだった。そこで予定を変更して、八丁坂の頭から北西へ折れ、八丁坂コースを下って青根バス停を目指すことにした。バス停の目の前に旅館があり、温泉ではないが入浴できるというので、ひと風呂浴びて汗を流しながら暇をつぶそうという訳だ。
丹沢山から蛭ヶ岳まで、前日とは打って変わって稜線から富士山を眺めながらの山行となった。
歩き始めた頃は晴れていたが、およそ一時間後には雲が出始めた。
富士山の右側に白く連なる峰々は南アルプスだろう。
富士山と丹沢最高峰の蛭ヶ岳。
富士にはキクザキイチゲがよく似合う?
蛭ヶ岳には8時50分頃に着いた。
蛭ヶ岳山頂に建つ蛭ヶ岳山荘。こことみやま山荘でも記念バッジを買った。
丹沢最高峰の蛭ヶ岳山頂から富士山を望む。
深田久弥が「日本百名山」を著した時に丹沢山を取り上げているが、その理由を「個々の峰ではなく、全体としての立派さからである。」とし、丹沢山の標高を蛭ヶ岳の標高である1673mを採用している。そのことから、蛭ヶ岳に登らないと「百名山」の「丹沢山」に登ったことにならないという人もいるらしい。私は「百名山」の制覇を目指している訳ではないが、そういう話を聞くとやっぱり蛭ヶ岳に登らない訳には行かないと、今回のルートを選んだ。
富士にはシロクマがよく似合う!!!
9時20分過ぎに蛭ヶ岳山頂を出発した。これまで見えていた富士山が、隣の尾根に遮られ、段々見えなくなっていった。
大倉尾根ではキクザイイチゲとスミレ以外に花を見つけることができなかったが、下りのルートでは何種類かの花々を見つけることができた。
ツルシロカネソウ?
???
まだ山桜が咲いていた。
11時ごろに姫次に着いた。展望も良くベンチもあるので早めに昼食を摂ることにした。この辺りまで来るとまた富士山が見えるようになったが、タイミングが悪く雲が邪魔をしていた。
宿泊したみやま山荘に弁当を頼んでおいた。おにぎり二つと漬物ぐらいかと思っていたが、ふたを開けてびっくり! ちらし寿司だった。ほとんど具は入っていないが、酢飯にタケノコが入っていた。弁当が入っていた袋も味がある。
約40分ほど休憩して、下山再開。しばらくすると八丁坂の頭から北西へ折れ、八丁坂コースを下る。
ツツジ
13時50分頃に、釜立尾根コースの舗装された林道に合流した。
日射しを浴びて、林道沿いの樹々も鮮やかに輝く。
14時30分頃、ようやく目指す旅館に到着した。約13.5km(Ambit測定)、約8時間の行程だった。バス停は目の前で、バスの時間まで2時間弱ある。ゆっくり風呂につかって汗を流した。小腹がすいたので、旅館に隣接する食堂で肉うどん一杯を二人で食べ、コーヒーを飲みながらのんびりとバスを待った。
バスを乗り継いで橋本駅まで行き、宿泊する浅草のホテルを目指した。